「恥の多い生涯を送ってきました」
これは「人間失格」という小説の書き出しです。
あまりにも有名なので、「人間失格」を読んでいなくても知っている人は多いかもしれません。
そして、この作品を書いたのが太宰治です。こちらも有名な文豪ですよね。けれども……
「人間失格も太宰治も知っている。ただ読んだことはない」
そんな人、多くないでしょうか?
実は、僕がそうでした。太宰治だからではなく、文豪と呼ばれる人の作品ってむずかしくて読む気にならなかったんです。
そういったイメージもあったためこれまで読んでこなかったのですが、このブログをはじめて読書の時間を増やしたことで、「太宰治作品も読んでみたいな」と思えるようになり、実際に読んでみました!
今回は「太宰治全集3」という本の紹介となります。
- 太宰治ってどんな小説を書くの?
- 昔の小説って面白いの?
このように考えている人に「読んでみたい」と言ってもらえるよう、太宰治の魅力を伝えていけたらと思います!
太宰治作品をはじめて読んだ感想
「太宰治全集3」について書く前に、まずは太宰治作品をはじめて読んだ感想や太宰本人の印象を書いていきますね。
作品の感想
僕は昔の小説を読むのが苦手ですし、短編小説もそれほど好きではありません。この「太宰治全集3」も『ア、秋』を読んでみたかっただけでした。※理由は後述します
そんな僕でもすべての作品を読むことができました。
もちろん全部が面白いと思ったわけではないのですが、新鮮さというか……意外性が大きかったんです。
「あ、太宰治ってこんな文章書くんだ!」とか「思っていたよりも読みやすいぞ!」というような感じでどんどん読み進められました。
太宰治の印象
読む前の太宰治の印象は「ネガティブ」「自殺」くらいしかありませんでした(笑)。
世間一般でもこのような印象をもっている人は多いと思います。
そして、読み終わってなんですが……
「ネガティブ」と「自殺」の印象は間違っていませんでした(笑)。
というか余計にその印象は強まりました。
ただ、それに加えて「繊細さ」と「爽やかさ」のある文章を書く作家だとも感じました。一言で表すなら「エモい」んですよね。
ネガティブだし暗いんだけど、湿ってないというか。すぐ倒れるけど、必ず自力で起き上がるというか。
色々と気にしすぎる作家だとは思うのですが、それを弱さと終わらせないでどうにか前向きに自分の強さに変えていこうとしている……そんな風に僕は感じました。
太宰治全集3
- 発売日:1988年10月
- 著者/編集:太宰治
- レーベル:ちくま文庫
- 出版社:筑摩書房
- 発行形態:文庫
- ページ数:464p
- 必要読書レベル:☆☆☆☆
今回紹介する「太宰治全集3」は、短編小説がたくさん収録された本になっているので、太宰作品がたくさん読めるようになっています。
これまで太宰作品を読んでこなかったので知らないのですが、太宰治はけっこう短編小説を書いていたのでしょうか。
有名な「走れメロス」も収録されているので、まずはここから読んでみるのも面白いと思います。
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きっかけ
そもそものキッカケは以前紹介した「バズる文章教室」を読んでいる時でした。この本に太宰治の「ア、秋」という作品について書かれていて興味が湧いたんです……が、読み直してみても「バズる文章教室」の中に「ア、秋」について書かれているページを見つけられなかったんですよ(笑)。
じゃあ、僕はどこで「ア、秋」について知ったんだってことになるんですが、分からないんです。おそらくページを読み落としているだけだと思うんですが、色々な本を読んでいるので断言できないのがもどかしいところです(笑)。
おすすめ収録作品
「太宰治全集3」に収録されている作品で、太宰治を知らない人にこそ読んでほしい、個人的に面白かった小説を紹介します!
八十八夜
・かなり面倒な性格の「笠井さん」という作家が主人公。
・この「笠井さん」が以前宿泊した宿屋に再び泊まりに行き、そこでの出来事が主に描かれています。
・「笠井さん」の心中がこれでもかとつづられています。後ろ向きな文章で、読んでいるこちらが恥ずかしくなるような所はあるものの、終わり方は非常に爽やかで良かったと思いました。
・全集の中でも短い小説なので読みやすいですし、この「笠井さん」がどうしても太宰治本人と重なって読んでいて面白かったです。
・「太宰治全集3」の最初に収録されているので、「八十八夜」が気に入れば、おそらくですが太宰治のことも好きになると思います!
座興に非ず
・冒頭で「人間失格」の書き出しを書きましたが、「座興に非ず」は最後の一文が特徴的でした。
・以下にその一文を抜粋しておくので、気になった人は是非とも読んでみてほしいです。四ページと短い作品なのですぐに読めます。
「私の自殺は、ひとつきのびた。」
※「太宰治全集3」……p33『座興に非ず』より抜粋
畜犬談
・『畜犬談』は太宰治の印象を最も変えた小説でした。
・犬を嫌い、軽蔑すらしている小説家の主人公。しかし、その意に反して犬には好かれるようで、ある日散歩していたところ、仔犬についてこられ家で飼うことに。
・飼い犬でさえその憎悪は変わりませんでしたが、文章の端々には気にかけている様子がわかります。
・終盤、皮膚病にかかってしまった飼い犬を薬を使って殺そうとするのですが、最後の最後で自分自身の本心と忘れていた芸術家としての心を思い出し踏みとどまります。
・こちらも主人公が小説家だったので、自然と太宰本人と重ねて読んでいました。
・序盤から犬に対して酷い文章が続くのですが、終盤の葛藤は主人公の情熱と良心があふれてくるようでとても良かったです。
兄たち
・四人兄弟の末っ子視点でのお話。
・途中からは「末っ子から見た三男」の話がメインになります。
・顔は良いが、変人である三男の奇行や日々の様子が皮肉っぽくも家族愛を感じさせる文章で描かれています。
・死に行く際も伊達を通し切った三男が切なく感じ、そこが良かったです。
善蔵を思う
・主人公の心境が前向きになったり後ろ向きなったり、ちょっとしたことで頻繁に変わります。
・主人公は繊細だけどめんどくさい人柄で、越してきたばかりの家に百姓がバラを売りに来るのですが、その百姓を「偽物(自分をだましに来た詐欺師)」と見抜きます。しかし、「自分も金に困った時期があった」と不憫に思いバラを買ってしまいます。
・その後も変化し続ける主人公の心境と醜態が描かれます。ある大ヘマをした後、友人が家を訪ねて来るのですが、その際に、以前買って庭に植えていたあのバラをほめてくれます。
・気を良くした主人公は「このバラの生きて在る限り、私は心の王者だと、一瞬思った」と述べ、それで終えています。
・つらい時にこそ本当に価値あるものに気付かされるようで、とても好きな作品でした。
乞食学生
・「太宰治全集3」で最もおすすめしたい作品です。
・作家の太宰が、佐伯という一人の青年と偶然出会い、ひょんなことから議論をし始めます。そのうちに、太宰の『強がり』のような感情が止められなくなってしまいます。
・途中、熊本くんという佐伯の友人も合流し三人で遊び始めます。
・32歳の太宰と学生の二人。歳は離れていても気が合い、太宰としては初めての青春を体験しているようだったのですが……。
・ラストは喫茶店で太宰一人の場面になり、普段はビールを頼むのにこの時はカルピスを頼みます。個人的にはここの太宰の心境とその描写が非常に突き刺さりました。
まとめ
太宰治の小説をじっくりと読んでみて思ったのは、「ギャップ」でした。
最初はネガティブな印象で、事実それは間違っていなかったのですが、嫌な気持ちにはならなかったのですね。それ以上に「爽やかさ」や「なつかしさ」みたいなものを感じました。
今回読んだ全集は10巻まであるみたいなので、もしかすると「太宰治全集3」がそういった印象を受ける作品が集まっていただけかもしれません。
それでも太宰治のイメージはガラリと変わりました。短編・長編どちらももっと読んでみたいと思えました。
ネットやSNSの普及によって、僕らの周りには大らかな文章や新たな言葉があふれています。そんな時代だからこそ、文豪・太宰治の書く本物の「エモい文章」に触れてみるのも良いのではないでしょうか。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!
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