【異形コレクション】 蠱惑の本 【感想】

 周囲360度が本に囲まれている仕事というのは、一般的な人にはどう思われるでしょう。

 個人的な感想を述べるならば「とても良い」と言えます。単純に「好きな物に囲まれている状況」ならば誰でもそう感じますよね。

 本は特にその気持ちが大きくなります。新しい本との出会いが無数にあるわけですから。

 今から紹介する本はそんな本。仕事中に出会った本。

 本好きによって書かれた、少しだけ怖い本。

蠱惑の本

 その本の表紙を見たとき、一瞬で惹き寄せられたのを覚えています。王冠を載せた蛸のような生物がじっとこちらを見据え、その目は点線で描かれた三角形で囲まれています。

 本のタイトルは「蠱惑の本」。

 仕事中でしたので中身を確認することは出来ませんでしたが、裏表紙をちらっと確認すると、少しだけ怖そうな本であることが読み取れました。

 奇妙な蛸・三角形に囲まれた「目」・怖そうな本……どれも僕の好奇心を刺激する上、タイトルが「蠱惑の本」。

 これは忘れてはいけないと思い、休憩時間にネットで調べ、数日後に注文しました。

 「蠱惑の本」は【異形コレクション】と呼ばれる作品群の一冊でした。そして、その記念すべき50巻目を飾っています。

 一冊に多くの作家の作品を掲載するアンソロジー形式で、ひとつひとつの物語は長くても40ページ程度です。

 50巻目といっても前知識など必要なく、手軽にたくさんの世界を体験できる物となっていました。

 「蠱惑の本」の特徴としては、どの作品(15作)にも『本』が関わっています。

 いわくつきの本が出てくるものもあれば、本をはく製にする男の物語など……作家一人ひとりが多角的に本を捉えていて、最後まで飽きずに読めます。

異形コレクション

 【異形コレクション】とは、作家・井上雅彦氏が監修するホラーアンソロジーシリーズで、掲載作品には国内外の作家に加え、時期によっては一般読者からの投稿作品も掲載されています。

 「蠱惑の本」はこのシリーズの50巻目ですが、上述したようにどこから読んでも問題ありません。

 また、タイトルがそれぞれテーマになっていることが挙げられます。

 「蠱惑の本」では『本がテーマ』でしたが、他の【異形コレクション】はそれぞれテーマが違うので、同シリーズであっても色合いは異なります。

 ホラーアンソロジーと書きましたが、どちらかといえば「不思議な話」等、SFのジャンルに属する話も多いのが特徴です。

感想

 はっきり言ってしまえば、「蠱惑の本」は表紙に惹かれた本であり、内容はどんなものであっても気にしませんでした。

 本棚にあるだけで気分が上がる本。それくらいにしか考えていなかったのです。

 そのためか想像以上に楽しめました。

 アンソロジー形式の本はまったく読みませんが、作家ひとりひとりのレベルが高くどの話も面白かったのが意外でした。

 怖い話も大好きでそういった作品も多かったですが、読後の感情は「感動」の方が大きかったです。

 特に

  • 河原にて
  • 魁星

 という作品の読後感は非常に心地よかったです。

新しい出会い

 「蠱惑の本」を読んだ最大の収穫は、『たくさんの作家』の『たくさんの作品』を知れたことでした。

 今回は斜線堂有紀さんの作品に特に惹きつけられ、「もっとこの人の小説を読んでみたい!」と思い、「夏の終わりに君が死ねば完璧だったから」という作品を購入し、現在読んでいます。

 アンソロジー形式の小説はほぼ読みませんが、こういう感じで新しい作家さんを知っていけるのは良いですよね。

まとめ

 「怖い話」を読みたい……という気持ちは四六時中持っていて、今回の「蠱惑の本」もそれを期待した本でした。

 実力のある作家さん達の短編はどれもこれも面白く、飽きることなく読み終えることが出来ました。

 しかし、その読後感というのは、ホラー小説を読んだヒヤヒヤする感じホッと安堵する感じと違いました。

 あったかい気持ちになれたんですよね。

 それは最後に掲載されていた『魁星』が一番の要因でしょうが、それでも、全ての作品に共通していた「本が好き」という思いが伝わったからです。

 表紙は少し不気味で、全く怖くないわけではありませんが、ホラーが苦手な人でも十分楽しめる一冊となっていると思います。

 是非、実際に読んでみてください。

 以上、うきっコでした。

 

 副業としてブログを始めるものの❝177円❞しか得られていない男。

 「文章を書く」「本を読む」のが好きなのでブログは継続中。

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