退職して不安だった僕が勇気づけられたもの:とある詩編

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おまへのバスの三連音が どんな具合に鳴ってゐたかを おそらくおまへはわかってゐまい

その純朴さのぞみに充ちたたのしさは ほとんどおれを草葉のやうにふるはせた

この詩をご存じですか?

これは宮沢賢治の「告別」という詩です。

僕は宮沢賢治をそれほど知りません(笑)。それでも、とあるきっかけでこの詩を知った時、強い感銘を受けました。これもまた退職して間もない、先が見えずに毎日が不安な頃でした。

この詩は、別に誰かを励ましたりするものでもなければ、読んで元気をもらえるようなものでもありません。なにせ「告別」という題名です。それでもこれを読んでいると、やる気や勇気がわいてくるのです。

ドラマ「神の舌を持つ男」

2016年に放送されていた金曜ドラマに「神の舌を持つ男」という、向井理さん主演の作品があります。

宮沢賢治とは……まあ、ほとんど関係ありません(笑)。しかし、このドラマが無ければ僕は「告別」という詩を知り得ませんでした。

というのも、このドラマには佐藤二朗さん演じる「宮沢寛治」というキャラクターが、主要な人物として毎回登場します。

そう、宮沢寛治です(笑)。作中でも「名前が似ているという理由で宮沢賢治を愛好し、その作品やうんちくを毎度語る」という役です(笑)。

このドラマをいつも観ていたわけではないのですが、その日はチャンネルがこれになっていて、ただボーっと観てました。

確か、「主人公が壁にぶち当たった」もしくは「全て諦めてほうり投げる」そんな展開であったと思います。そのシーンで使われたのが、「告別」でした。

この詩のとある部分が耳に入った瞬間、佐藤二朗さんの声に集中したのを覚えています。

※以下、一部抜粋です(ドラマでまるまる使われたかは覚えていません)。

おれは四月はもう学校に居ないのだ 恐らく暗く険しいみちをあるくだらう 

そのあとでおまへのいまのちからがにぶり きれいな音の正しい調子とその明るさを失って

ふたたび回復できないならば

おれはおまへをもう見ない

ドラマは続いていましたが、何度も「おれはおまへをもう見ない」と、心の中でつぶやきました。

あまりこんなことは無いのですが、ドラマが終わってからもこの詩が忘れられず、全部を知りたくて「告別」が収録されている文庫版の詩集を購入しました。

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告別

僕は宮沢賢治どころか、「詩」というものも全く読んだりしてこなかった人間なので、正しい解釈が出来ているかは分かりません。ただ、この「告別」という詩は今でもたまに読み直したりしますし、その度に同じ気持ちを抱くのです。

この詩は、宮沢賢治教師をしていた頃、卒業していく一人の生徒へと向けて詠んだものらしいのです。

是非とも全文読んでほしいので、内容は……書かないです(笑)。一度要約して自分の言葉で書き出してみたんですけど、どうしても安っぽい文章にしかなりませんでしたので……。

この詩を好きになった大きな要因は、共感のような気がします。僕の感想でしかありませんが、宮沢賢治は「諦め」「失望」「期待」を何度もしてきたんじゃないか?と、そう思いました。

音楽の才能を持つ生徒を見送り、その才能を開花させ音楽家として大成し幸福を得るだろう。そんな有望な生徒をたくさん見てきた……でも、ほとんどの生徒は音楽の才能を失くし普通の人としての幸福を手にしていた。宮沢賢治は、それに失望した気がするんです。

怒り」ではなく「失望」なんですよ、イメージは。詩の中で宮沢賢治は別に、その……普通の人としての幸福を責めてはいませんから。

その失望を何回も何回もした結果、どこか諦めの域に入ってる……「多分、この子も凡人として終えるのだろうな。才能あるのにな。その才能を捨てるのだろうな」って。

それでも。失望して諦めても、それでも期待してしまっている

だって、期待していない人に対して「俺はお前をもう見ない」なんて言います?僕はここに共感しました。はっきり言えば、この言葉を聞いてドキッてしました。見捨てられるような気持ちになって怖くなりました。

恥ずかしい話、僕は小説家になりたかったんです。退職して、毎日バイトして、その中で小説を書きつつ、いつか小説家としてデビューする。そんな夢を思い描いていました。

そんな甘すぎる妄想を、この詩に見透かされた気がしたのです。元から才能なんてありませんでした。でも「いつか、きっとなれる」と、真剣さのかけらもない態度でずっといた僕を「もう見ない」と言われたようで。

実際、才能があってもそれを維持していける人はほんのわずかだと思うんですよ。何かを続けること自体が大きな才能なんですけど、僕みたいな凡人はそれすら出来ません。

「がんばれよ」「もうちょっと続けてみなよ」って言われるよりは、「やらないんなら、俺はお前に期待しない」って言われた方が焦るというか。

僕はブログを書き始めてまだまだ間もないですが、続けていきたいです。幸い、今のところ「告別」を読むような状態にはなっていませんが、退職して無意味な毎日を過ごしていた時は、本当のどん底に落ちないためにこの詩をくり返し読んでいました。

詩というものも難しく考えず、読んで感じたことを大切にしていけば良いとも思えるようになりました。宮沢賢治、「告別」、どれかに興味をもっていただけたのなら嬉しいです!

それでは、ここまで読んでくれてありがとうございました!

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